アーティスト特集 第2弾 ドリーム・シアター

第四回

ドリームシアター
『AWAKE』期



1994年、サードアルバム『AWAKE(アウェイク)』がリリース。この制作半ばで、主要メンバーの一人であったキーボードのケヴィン・ムーアが脱退を表明する。これは、メンバー達にも大打撃を与えた。


ケヴィン・ムーアのコメント

音楽的に、作曲へのアプローチの仕方がここ数年で大きく変わってしまった。他のメンバー達が苦労しながら出し合ったアイデアに妥協点を見出している。ここが僕の考えと他のメンバーとで大きく変わってしまったポイントなんだ。僕自身は、自分の曲を書き、レコーディングする事に非常な満足感を見出した。ついには、これは他の何物より重要な事になってしまったんだ。僕は、もっと自分自身の音楽的アイデンティティの追求をする必要を感じた。そして、僕自身と彼等自身のためにも袂を分かつ事を決意したんだ。

ドリームシアターが音楽世界に提示できるものが沢山あると信じているし、ミュージシャンとしても人間としても深くリスペクトしている。健闘を祈っている。


ケヴィンは、Chromakeyというプロジェクトを立ち上げ、『Dead Air For Radio』というアルバムを1998年の6月にリリースしている。


他メンバーのコメント

ラブリエ(Vo.)曰く、彼はドリームシアターにいてはできない音楽的探求に向かった。彼が抜けることは非常に残念だが、彼はいつまでもドリームシアターの家族の一員だ、と。

時間を経て、情熱や音楽の趣味が異なってしまった。各々の道を進むのが一番良いと思う…、との事である。

ジョン・ペトルーチ(G)とジョン・ミュング(B)は、ケヴィンとは高校時代からの盟友であった。これゆえに打撃も大きかったようである。

ジョン・ミュングは、他のメンバーはLAにいたが、自分のベース録音を終えていたので一人NYに戻っていた。ある時、電話が鳴ったので受話器を取るとケヴィンであった。彼は、藪から棒に「バンドを辞めたから」と言う。激しい怒りを感じたが、留まるように何度も説得にあたった。だが、無駄だった。ケヴィンの脱退を持ってバンドを解散させるべきか?という話も出た。まるで家族の絆が失われたかのような気持ちだったという。

これはある意味で、ドリームシアターが、深い気持ちで繋がっているバンドだという証左にもなる。そもそもケヴィンは、ドリームシアターの音楽にそれほど情熱を持っていない事に気付いたらしい。他のメンバーも頭の片隅では気付いていたようだ。それはケヴィンの中で疎外感となり、ついに脱退という形で表れた。

次のキーボード奏者として、デレク・シェニアンがツアーに参加した。彼は、バンドの友人であるアル・ピトレリの推薦による。アリス・クーパーなどに参加していた人物だった。同じバークリー音楽院出身という事もあり、メンバーも親近感が湧いたそうだ。


楽曲紹介

#16:00

かなりヘヴィなギター・リフと、リズム(変拍子)が目立つ。ラブリエのボーカルもかなりアグレッシヴである。曲調としては、ポップな感じと、ヘヴィネスさ、アダルトな感じが混在している。歌のメロディもキャッチーであると筆者は感じる。音数が多い。

#2Caught In A Web

イントロが、壮大でダイナミックであり、印象的だ。キーボードが全体的に、神聖な感じの音、メロディを奏で、ギターやベースがヘヴィな刻みというグルーヴを形成している。

#4Erotomania

不思議なイントロの音。異次元世界へ誘われるかのよう…。この曲も展開がめまぐるしい。曲の途中で繰り出されるエレクトリック・ギターによるクラシカルな旋律は心地よい。

#5Voices

ドリームシアターの曲の型の一つとして、意外と多い曲。アダルトな洋画音楽的な曲。ダークさを含み、情念が濃いような曲。人によっては胸が押し潰されるような感覚を得るかも知れない。この手の曲に関心を持つ人は、音楽自体に関心を抱く人かと思われる。

こういう曲を聴くと、筆者は潜在意識から眠っていた記憶が蘇る感覚を覚える。夢の世界を顕在的に自覚できるような。恐らく、ドリームシアターのメンバーも深い感覚を味わいながら創作活動に取り組んでいるのだろう。

筆者は曲をかけながら原稿を書いているが、この記事を書いている現在、夕立が起こっており、雲間からさす光と、雲の陰、草が風になびく様子も深い気持ちを惹起させる要因になっているのかも知れない。

#6The Silent Man

今までの曲のダークネスさを払拭してくれるようなアコースティック・ナンバー。優しい感じの曲。一抹の寂しさは残る。曲の途中でゆったりとしたストリングスが入り、生ギターの優しいソロを堪能して欲しい。

#7The Mirror

The Mirror」はあまり曲に抑揚を感じない。だが、この曲が終わり、「Lie」が始まると燃えるのである。「Lie」に向けての前奏曲と筆者は恣意的に解釈している。

#8Lie

まるでドゥーム・ロックのようなミディアム・テンポである。歌メロや雰囲気が悪っぽい感じで良い。メロディに抑揚のある曲。中盤では、70年代ブラックサバスのようなリフやメロディが展開される。オジーの面影が浮かぶ。その後に入るギター・ソロも良い。

#9Lifting Shadows Off A Dream

4分を過ぎた辺りから感動的なメロディが展開される。

#10Scarred

ちょっと緊張感があり、妖しげなベースとドラムが絡んだイントロ。ジャジー。そこにヴォリューム奏法のギターが入る。11分に及ぶ曲ゆえに、展開も当然めまぐるしい。

ソロも長く、音数多く、メロディにも富んでいる。サビの部分、バックのグルーヴ感が良い。エンディングもキーボードが派手でいい。曲調は明るくはないが!

#11Space-Die Vest

憂いを秘めたピアノの旋律から始まる。望みを失ったという気持ちの曲だ。ケヴィン・ムーアの曲である。ケヴィンが女性と別れたという時期のものであるが、歌詞を見ているとドリームシアターへの気持ちをも含んでいるようにも感じる。


全体として、ダークさが漂うアルバムである。


                              2005年8月 akira     

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