アーティスト特集 第2弾 ドリーム・シアター

第六回

ドリームシアター
METROPOLIS part2 ~ scenes from a memory』期



1998年に『メトロポリス・パート2 シーンズ・フロム・ア・メモリー(METROPOLIS part2 SCENES FROM A MEMORY)』を上梓する。コンセプト・アルバムである。各界で、とてつもない絶賛を受けた名作中の名作とされる。


「俺達は、いつもコンセプトアルバムを書きたかったんだ」とマイク・ポートノイは語った。「俺が好きなアルバムは全てコンセプトに基づいている。ピンクフロイドのTHE WALLに、ザ・フーのTOMMY、クイーンズライチのOperation Mindcrime…。いずれも大きな影響を受けているんだよ。」と。

ジョン・ペトルーチは題材の選択には留意した。「アルバム全体に閉じ込めるための十分興味をかき立てるものを書いた。そこで話の基底には輪廻転生を選んだ。この題材は俺達の死後の世界への興味を取り扱わせてくれるからね。死後の世界はほとんど全ての人が不思議に思う現象だよね。」


アルバムは、ベアトラックスタジオでなされた。「ここは、Images & Wordsもレコーディングした場所だ。今回のプロジェクトでのユニークな点は、初めて俺達がデモなしで作った部分だな。このレコーディングのために、ある種の新鮮さが欲しかったからなんだよ」ジョンは説明する。

より自然発生的なものを捉えたいというグループの希求は、マイクとジョンがLiquid Tension Experimentでルーデスと仕事を共にした結果でもある。そこでメンバーはルーデスと彼の音に虜になり、彼をフルタイムのメンバーとして採用した。ジョン曰く、「彼は間違いなく、俺達が仕事を共にした中で最も才能があるメンバーの一人だ。彼は、このアルバムの中で大きな役割を果たしている。グループはまた、このアルバムのミックスのためにケヴィン・シャーリーの名も連ねさせた。彼は、エアロスミスやブラッククロウズなどとも仕事をしている。ジョンが言うには、「俺達は、このアルバムのために力強いエッヂが欲しかった。ケヴィンはバンドからその力をいかに引き出すかをまさに分かっていたんだ」と。


ストーリー紹介

主人公ニコラスは、ずっと悪夢にうなされてきた。現在の生活とは別次元の生活を送っている自分の幻影…。これはどうも前世の出来事らしいと気付いたニコラスは催眠療法を受ける事にする。催眠術にて、自分の過去世を思い出すというものだ。

そしてニコラスは、催眠状態へと陥っていき、前世のヴィジョンが立ち上ってくるのを見る。過去世での自分、ヴィクトリア(女性)の記憶が蘇ってくる…。

現世での、ニコラスとしての記憶と、ヴィクトリアとしての記憶が同時に並行し、混乱状態に陥る。奇妙なデジャヴュ、気が狂いそうになる。だが、真実を見出す事を望む。

そうして得た真実とは次のものであった。

ヴィクトリアは、嘗てザ・ミラクル(エドワーズ・ベインズ議員)と愛し合う仲であった。彼女は、永遠の愛を求めたが、彼には別の意図があり、道を誤った。彼女は彼を拒絶した…。

そんな仲、ミラクルの兄弟であるザ・スリーパー(ジュリアン・ベインズ)とヴィクトリアが惹かれ合う関係となり、情を交える仲となる。ミラクルがこの関係を知れば、スリーパーを殺す事も辞さない男であるとは分かっていた。

時間が経ち、ミラクルは思いつめた状態となり、自分のものにならないのならヴィクトリアを殺した方が良いと結論付け、実行に至る。拳銃にてそれを為した後、自分もまた自殺を試み、ヴィクトリアの遺骸の上に自らの遺骸を重ねる事になった。

過去世での悲劇的な顛末を知るに至ったニコラスだが、同時にある見解に至る。それは、人間はどこから来て、どこに行くのか?という人間の学問の根本的命題への解答であった。彼はこの体験を通して、魂というものが不滅であり、死は存在の終わりではないと理解したのだった。死への恐怖が過去のものとなった。勿論、全てを理解したわけではない。努力を怠るべきではない。

そして、過去世ヴィクトリアの生涯を理解する事で、不可解なヴィジョンからは解放された。自由になれたのである…。

最後の最後の場面。催眠療法師の「目を開けて、ニコラス」という声が聞こえ、ニコラスは「アッ」と悲痛な声を挙げる。これで終わるという不可解な結末にてこの物語に終止符が打たれる。


楽曲紹介

1曲目「SCENE ONE:REGRESSION

催眠療法士が、深呼吸を促し、リラックスをさせるメッセージから始まる。柔らかなアコースティック・ギターが、これからの自分に秘められた過去の探求への始まりを予感させる。

2曲目「OVERTURE 1928

まさに、これから始まる潜在意識への旅を感じさせる。期待や憂いを感じさせるが如き、インストゥルメンタル・ナンバー。メジャースケールに、クロマティックをうまく多用しておりドリームシアターらしい。

3曲目「STRANGE DÉJÀ VU

過去世のヴィクトリアとしての記憶が戻ってきて、同時にニコラスとして記憶が残り、錯綜し混乱する様子が楽曲にも表れている。

4曲目5曲目

バラード的な落ち着いているが、緊張感がある曲。

6曲目「BEYOND THIS LIFE

疑惑を孕んだ様を感じさせる曲調。She may have found a reason to forgive oh yeah yeah という歌詞があるのだが、このOh yeah yeahという部分。ラブリエ氏の声が熱く、非常にカッコイイ。是非意を注いでみて欲しい。

8曲目「HOME

アラビア的やインド的な音階の曲。シタール的な音も聞こえる。ここで使われるスケールの名前は知らないが、しばしば様々なアーティストに用いられている。東洋起源の音階だろうか?

ドリームシアターはしばしばアラブ的な音階も使う。こうした系統の音階は、下手に使うと陳腐な蛇使いの曲になるが、うまく使うとエジプトなどの神聖な雰囲気を表現できる。例えば、「IMAGES&WORDS」の「UNDER THE GLASS MOON」などは流石である。

11曲目「THE SPRIT CARRIES ON

主人公が魂の不滅を見出し、ある種の真理を知り得た場面だ。その喜びにも似た感情を音楽がうまく表している。それはOVERTURE1928をベースとなっている。ジョン・ペトルーチ氏が研究したという霊的世界の探求の成果が見える。

12曲目「FINALLY FREE

主人公はついに自分の過去世に秘められた事実を知るに至る。それにより主人公は、ある種のカタルシスを得る。物語の結末を飾るに相応しい悲しみを孕んだ曲調。OVERTURE1928のフレーズが前編に渡り、効果的に何度も使われているところが映画的であり、物語性を感じさせる。筆者は、そこにもカッコ良さを感じる。何か心に来るものがある。


解説

一番最後の場面で、催眠療法師の声に、ニコラスが声を張り上げて終わるという部分には様々な物議を醸している。ニコラスは何を見たのであろうか?

ある一つの推測に依れば、日常に戻ったと思っていた矢先に、催眠療法師の声が聞こえる。実は、意識世界の中を未だにさ迷っていたと解釈ができるかもしれない。

ところで皆さんは荘子の話をご存知だろうか?ある時荘子は夢を見た。自らが蝶になり飛んでいるという夢だ。この時荘子は思った。蝶が夢の出来事なのか?蝶が見る夢が人間としての自分なのか?

別の例えを出せば、アーノルド・シュワルツェネガー主演のトータルリコールという映画を思い出して欲しい。バーチャル・リアリティが発達した近未来。このバーチャル・リアリティの技術は、仮想現実の中で完全に別次元の人生を再現できる。それは完全にリアルな感覚を伴っている。

この仮想現実の世界は、この世界では娯楽として発達している。主人公はそれを体験する。だが、この完全に別次元の世界を経験した後に、主人公は現実と思っていた世界が変容していく事に気付く。実は自分が何らかのエージェントであったのだ。かつ実はスパイであった妻に追われ、逃げ回り、レジスタントグループと仲間になり事態の真相を追究して行く。

つまり、『トータルリコール』においては、どこからどこまでが仮想現実世界なのか?現実世界なのか?の区別がつかなくなるのである。荘子の話もそうであり、この世は実は夢であり、夢が現実ではないか?という示唆である。東洋的な思想には、この世は夢や幻ではないか?というものが古くからあるのである。

『トータルリコール』という言葉は“全てを思い出す、全知覚する”というニュアンスの意味だが、東洋的な表現で言えば、覚醒や悟りなどの語がしっくりくる。夢幻的この世の存在の実質を知り得る…。実際にこの作品には東洋的シンボルが随所に散りばめれられている。例えば、レジスタンスのリーダーが、ある人物の腹部に潜む胎児であったりする。これは東洋的秘儀の象徴である。皆さんも、腹切りの言葉などから、我等が先祖がハラに重きを置いた事はご存知であろう。

ニコラスの場合は催眠術であるが、過去世などを覗いてしまった後、様々な記憶、人生、アナザーワールドがあると理解したのかもしれない。もしかすると現在も何らかの催眠世界にいるかも知れないではないか!この場合は、催眠で自らの潜在意識に潜り込んだのはいいが、まだまだ自分の中に謎の領域があったことを示唆している可能性もある。終わったかのように見えた自己探求の旅に未だ続きがあった…。そうも考えられそうである。

ジョン・ペトルーチ氏もこうした事柄を真剣に追及してみたそうだ。氏はスターウォーズなどのSFも好きである事から、こうした見解も持っていておかしくないと思われる。


余談1

皆さんは、並行宇宙論やマルチバース理論と呼ばれる物理学の仮説をご存知だろうか?アカデミックの世界で、今現在我々が住む物質的世界以外にも、様々な状態での物質的世界が無限に実在するという仮説が提唱されている。驚くべき事に、アカデミックの世界での話である。この現実世界と原子一つの運動が違うだけのほとんど同じ世界から、物理的法則が全く異なる世界までが無数にあるというのである。

数学などの根拠と共に発表されるところが科学的なのであるが、古来より東洋に見られる思想と類似を感じるのは筆者だけであろうか?

余談2

前世物の物語の定番として『僕の地球を守って』がある。一世を風靡した少女漫画である。この漫画には、PLEASE SAVE MY EARTH!とコピーがある事から、HELLOWEENの守護神伝2における「SAVE US」を回想してしまうのは筆者だけではあるまい。メタルファンであれば誰でも読んでいるであろうこの漫画である。前世繋がりという事からドリームシアターと共に覚えておいてもよい作品であろう。

                               20059akira     

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