アーティスト特集 第3弾 ハロウィン

第二回

ハロウィン 『守護神伝一章二章』




守護神伝第一章(KEEPER OF THE SEVEN KEYS part1)』

1987年ハロウィンは『守護神伝第一章(THE KEEPER OF THE SEVEN KEYS part1)』を出した。これは世界的名声を得、また次回作への布石ともなった。ボーカルがカイ・ハンセンよりマイケル・キスクと移行している。

本人達は、今作を次作である『守護神伝第二章(THE KEEPER OF THE SEVEN KEYS part2)』とのダブル・アルバムを希望していた。だが、NOISEレコードの意向により、別々という形になった。

NOISE…ドイツのインディーズレーベル


楽曲解説

『守護神伝第一章(KEEPER OF THE SEVEN KEYS part1)』

前作よりかなり作曲のレベルが上がっており、メロディアスなできとなった。演奏技術は後年に聴けるものよりは当然下手である。だが、良い味わいを出しており、メロディ重視派にはお薦めできる。メタルの基礎的なものを踏まえているので、初心者向けであり、また初めてコピーをする方にも向いていよう。


1.「序章(INITIATION)」

ハロウィンのコミカルさと、ヘヴィネスがうまく表されている。自分達のキャラクターを集約的に表している感もある曲である。一分ほどのインスト曲。

2.I’M ALIVE

前作では明確には見られなかった歌のメロディラインが浮き彫りにされている。メロディックパワーメタルとしての、ジャーマンメタルとしての、性格を示した作品である。

3.A LITTLE TIME

ギターの刻みも軽快なリズム心地よく、メロディも確りしている。重厚感もある。

4.TWILIGHT OF THE GODS

イントロのギター・ソロのメロディがまるでカイ・ハンセンの歌声のようである。ギターにおいてもボーカルと同様の感覚を出す男カイ・ハンセンここに極まれり…。ということもないが、ハロウィンのコミカルな一面も垣間見せるイントロである。

5.A TALE THAT WASN’T RIGHT

スローバラード。哀愁の漂うギター。このタイプの曲は後年の作品にも見られる。既にハロウィンのアルバムの典型は、この時期にできあがっていたといえる。

6.FUTURE WORLD

軽快なノリに、明るさと泣きが混在したメロディ。

7.HALLOWEEN

13分にも及ぶ大曲。Part2の方にも同様の大曲があるが、Part2の方が歌詞の内容、楽曲共に数段優れていよう。それでも前作と較べて、格段の向上があったと感じられる作品となっている。

8.FOLLOW THE SIGN

荘厳な雰囲気を漂わせる。次作の『守護神伝第二章』へ先導する役割を担っている。



『守護神伝第二章(KEEPER OF THE SEVEN KEYS part2)』

1988年、ハロウィン史上、最も有名なアルバムである『守護神伝第2章(KEEPER OF THE SEVEN KEYS part2)』が発表された。本作により、前作で示した以上の成果を収める。


カイ・ハンセン(G)の脱退、ローランド・グラポウ(G)加入

今作を上梓した後に、カイ・ハンセンは脱退する事になった。カイの体調不良を理由としていたが、カイ自身は事前に脱退を決意していた。その経過には、メンバーの能力がかなり向上してきたため、カイ自身の存在意義に疑問を感じた事にもある。確かに、マイケル・キスクのボーカル能力の高さ、ヴァイカート(G)の作曲能力を鑑みればカイの思惑も理解できる。元々ハロウィンは、カイ・ハンセンのワンマン的バンドであった。彼が作曲の大半を担当し、ボーカル、ギターを兼任していた事からもそれは分かる。カイ・ハンセンは、自己の能力を高め、道を再検討する時期だと判断したのである。

その後、カイは1990年に、自らのバンド“カイ・ハンセンズ・ガンマ・レイ”を開始する。フロントマンには、ハロウィンを歴任したラルフ・スキーパーが据えられた。安定したメンバー固めができた後、単に“ガンマ・レイ”を名乗るようになる。(固定メンバーには、後にハロウィンに加入するウリ・カッシュ(Ds)がいた)


ハロウィンは、カイ脱退後、ツアーを行う必要があった。そこで“RAMPAGE”のギタリストであったローランド・グラポウが後釜を務める事になる。

1989年にはライヴアルバムも発売されている。(『Live In The UK』(ヨーロッパ)、『Keepers Live』(日本)、『I Want Out Live(USA))これらはまだカイ・ハンセン在籍している時のものである。

Pt1は殊に日本、アメリカで人気が出た。ツアーの後には、Pt2を出す。この中の一曲「I Want Out」のビデオがMTVで賞賛されている。日本ではVictor/JVCより販売された。


楽曲解説

『守護神伝第二章(KEEPER OF THE SEVEN KEYS part2)』


前作よりも、楽曲、歌詞、各々の演奏能力…、いずれもレベルアップしている。ブラスも使われており、中世ファンタジー的な音楽性も打ち出している。ハロウィンらしい作品であり、世間がハロウィンを認識する際のイメージはここにあると言えそうである。

ロールプレイングゲームを好きな方は多いだろう。ハロウィンには、その同様のテイストが感じられる。ハロウィンが日本で人気が出た要因の一つに、ロールプレイングゲームなどを愛好する国民性があるように思う。ハロウィンのメンバーもゲームを愛好しているそうだ。

また哀愁漂うメロディも日本人に人気が出た大きな原因であろう。

1.INVITATION

壮大な物語の序章を刻むに相応しいインスト曲。ブラスも使われており、中世的な雰囲気を醸成している。ファンタスティックである。

2.EAGLE FLY FREE

歌詞には人類的危機的状況が描写されており、守護神伝のテーマと直接重なる内容だ。

音楽としては、メロディック・パワー・メタルの典型である。かつ作品の質が高い。ブリッジ(Bメロ)で、切なさを溜め、コーラス(サビ)で、ハイトーンを用いて爆発させる。その後に、長い泣きのギターソロが展開される。

エンディングで、コーラスのフレーズを連呼し、泣きのギターと絡み、極端なハイトーンボイスに終わる。感動的な終結である。

CMでよく見掛けるミュージカル『アニー』と同様の手法であるな。筆者は、即『アニー』が思い浮かんだのであるが、最近の『アニー』は1オクターブ低くなっているようである。声を上げて完結させるべきところを、下げているのである。駄目である。ハイトーンを出す事によってのみ起こり来る感動があるのである。子供さんにも頑張っていただきたい。因みに筆者は、この高さは出る。(筆者はロブ・ハルフォードの歌も歌える)ハイトーンは出るだけで気持ち良い。(でも『アニー』は未見なんだな)

ミュージカルに関して…ドリームシアターのジェームス・ラブリエやブラックモアズナイトのキャンディス・ナイトは、ブロードウェイのミュージカルにも出演している。ラブリエはオペラの勉強もしているようだし、メタルで名を挙げようとする人も広く目を向ける事がプラスになる場合もあるようにも思える。

4.RISE AND FALL

ハロウィンらしいコミカルさがある。メロディに泣きを感じさせるが、ノリが良く、軽快な曲。

7.SAVE US

愛好者が多い曲。Aメロからハイトーンを効かせている。ノリノリ。楽曲も歌詞もシリアスだ。

歌詞の解説をすれば、何らかの危機的状況からの救いを“呼び”かけているという内容だ。守護神伝のテーマと共通するイメージがある。

“俺達は、世界の果てに立ち尽くす。あと一歩進めば、終焉を迎えるだろう。俺達を導いてくれ、俺達の手を取ってくれ!お前がいなくては、俺達は弱く、孤独だ。俺達の叫びを聞いてくれ。”

こうしたニュアンスの歌詞がある。最後を飾る大曲「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」での一節、“人々にお互いの手を握らせ、彼らの心を真実で満たせ”にも重なる。人類的危機的状況の描写は、「EAGLE FLY FREE」とも連動している。

これを筆者は、リスナー一人一人に向けられたメッセージのように感じた。地球や地球に住む生命体の集合的無意識の叫びを代弁しているようにも思える。またハロウィンからの伝言のようにも思える。少しでも環境問題などに関心があれば、感じるものがある人は多いだろう。今作は、ファンタジーと言いつつも、社会に目を向けられた作品である事が窺えるのである。

余談ながら、この「SAVE US」という響きから、サビを連呼している場面などに、どうしても「僕の地球を守って」というコミックを想起してしまうのである。この作品は、サブタイトルが「PLEASE SAVE MY EARTH」だったのだ。それは少女漫画愛好家(最近非常に弱い)でもある筆者特有の癖だろうか?いや、そんなことはないだろう。この作品の世界観は、メタルに通じる!と思える人にはそう思えるので参考に供していただきたい。

10.「守護神伝(KEEPER OF THE SEVEN KEYS)」

壮大な物語を終結させるに足る13分に及ぶ大曲。歌詞、楽曲、演奏能力、いずれも申し分ない。(その後彼らも成長して行くわけだが。)

歌詞のあらまし

予言に記された戦士が、人類的な危機的状況において出現する。戦いでボロボロとなった鎧、剣を掲げて、闇の世界へと立ち向かう。KEEPER OF THE SEVEN KEYSの旅立ちである。

幻視者(The Seer of Vision)は言う…。人類の危機は、憎悪、恐怖、無関心(日和見主義)、貪欲、無知、などの七つの海からの瘴気により生じた。これを封じるための七つの鍵を携え、それぞれの海を封じよ、と。

幻視者の手より放たれる魔法に導かれながらも、戦士の道は困難を極める。同じところをぐるぐると徘徊したり、鬼火が道を誤らせる。戦士が呪文を投げかければ、必ず報復に遭う。偽者という名のドワーフが背中に泥をぶちつける。

戦士は、首筋を流れる冷や汗、鉄の意志を持つ者のみが耐え得る苦しみを味わう。それでも猶、七つの海封印までには険しい道のりがある。

そしてとうとう、それぞれの海に辿り着き、携えた鍵にて、瘴気の海を封印してゆく。鍵を投じなくては、我が友(人類)は悪魔の手に落ち、滅び去ってゆくだろう。鍵を投じよ!

最後の海。魔王が待ち構えている。鉄の轟音を発する魔王が、病気を生み出している。七つの星の力を持つ愚かな酔いどれだ。魔王は脅す。「鍵を投じてみろ。この世で最も残虐なものを味わうことになるぞ。」幻視者の声が響く。「奴に己の力を吸い取られてはならぬ。鍵を投じよ!投じよ!」

地震、噴出す炎、地が鳴り響く。魔王は断末魔をあげ、地はヤツを飲み込んでいった。

KEEPER OF THE SEVEN KEYS。七つの瘴気の海を封じ得た。悪魔も狂気も最早ない。幻視者も安らかに眠れる。戦士はついに暗黒世界に再び光をもたらした…。

守護神伝の解説

容易に解釈できることであるが、この七つの瘴気の海は、現代社会に闇をもたらす事になった原因である。深刻な問題を看過すれば、当然人類が滅亡の危機にさらされる可能性はある。昨今の報道を見れば、現実的な話である。

この問題を解決するためには、ここでの戦士と同様に困難がつきまとうであろう。「SAVE US」とも連動すると述べたが、この戦士は実はリスナー自身なのだろう。七つの鍵を携える者は我々一人一人と考えるのが妥当である。

またもう一つの解釈として、自らの人生で何らかの夢・野望を実現する歌とも取れる。夢を適える時の困難の描写と重なりはしまいか?前者の解釈が社会面・外面の変革であったのに対し、後者の解釈においては、内側の成長を描いているというそれだ。自己の内側に潜む悪魔を克服してゆく、つまり克己の過程なのである。

釈尊が、悟りを開く際に現れたという魔王(マーラ)の描写にも近似している。上記の解釈は的を射ている筈だ。他に面白い解釈があればご一報願いたい。


                              200511月 akira


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