アーティスト特集 第1弾 ブラック・サバス

第十三回

ブラックサバス『FORBIDDEN』期



1995年に18作目のスタジオ・アルバム『FORBIDDEN(フォービドゥン)』が発表される。

この作品は、アルバム『TYR』の時のメンバーにより制作された。即ち、トニー・マーティン(Vo.)、ニール・マーレイ(b)、コージー・パウエル(Ds.)、そしてトニー・アイオミ(G)である。

今回の加入前に、ニール・マーレイとコージー・パウエルは、二人ともブライアン・メイのソロ活動に参加していた。


ニール・マーレイ談

大切なのはトニー・アイオミの存在。彼はヘヴィー・メタルのルーツだ。僕にとって、本物のオリジナルと一緒にプレイできる事は非常に意味があることなんだ。BLACK SABBATHに影響を受けた人間とやるよりは、本物のBLACK SABBATHとやる方が良いに決まっているよ。


コージー・パウエル談

どんなに長くこの業界にいて、有名であっても人の気持ちは変わるという事を認識してなくてはならない。俺は自分が求められているところにいたいし、求められていないところにはいたくない。だからアイオミからのオファーは嬉しかった、と。


コージーは、JUDAS PRIESTのギタリストであるグレン・ティプトンのアルバムに参加したり、自身のソロ活動にと多忙を極めていた。

因みに氏は、1995年辺りの音楽を聴いたりする事はなく、6070年代の音楽を好んでいた。この時期のミュージシャンは水準がつとに高かったと氏は語る。どちらかと言うと、クラシックやジャズをよく聴いていたそうだ。


今回特筆すべきは、制作のプロデューサーにアーニー・C起用した事だ。彼は、ラップ集団BODY COUNTのギタリストである。そして、このバンドのボーカリストであるアイス・Tがゲスト参加しているのである。

彼等の起用は、マネージメント側が決めたものらしい。トニー・アイオミやコージー・パウエルは、ラップなどをほとんど聴かず、どちらかと言えば好きではないという。だが、アイオミ達に、その起用によって、どういう結果がもたらされるのか?という好奇心がもたげため、そのように遂行された。

曲作りは、ウェールズの農家を借りて、そこをスタジオにし、練りこまれた。マーティンとアイオミ、そしてキーボーディストのジェフ・ニコルズ(注)の三人を中心に作り込まれた。ニール・マーレイとコージー・パウエルは、仕事があったため、遅れて合流した。レコーディングは10日程で完成した。これは、嘗てなかった事だという。


()…ジェフ・ニコルズ

彼は、この時点で、既にブラックサバスに16年在籍している。アイオミを除けば、ブラックサバスに一番長く関わっているが、正式メンバーではないという不思議なポジションに立つ人間だ。彼自身は、サバス以外にも、個人のプロジェクトなど様々な活動をしている。


音楽性

TYR』などでは、ディレイ系のエフェクターをふんだんに使用し、荘厳な世界観を現出させていた。また、メロディも様式美を備えたものであった。

だが、今作『FORBIDDEN(フォービドゥン)』では、極力ディレイ系は抑えられている。生のギター感にある作品だ。前作『CROSS PURPOSES(クロスパーパシス)』でも、こうした傾向は見られた。だが、まだまだ様式美を備えていたし、ディレイ系の度合は高かった。

初期のブラックサバスに通じるような曲調が感じられるのは今作の特徴の一つと言えるだろう。ドゥーム的な面が聴き取れる筈だ。リフのブラック・サバスの復活である。

ただ、ロニー・ジェイムズ・ディオとの邂逅以来始まった様式美的なコード進行は、払拭できないものなのだろう。既に血肉と化している事を窺わせる。


楽曲紹介

The Illusion of Power」。この作品に、アイス・Tがラップ参加している。80年代以降は一切見られなかったドゥーム・ロック。メロディアスではない。今回は、こうした作品が目立つ。

Rusty Angel」。軽快でノリの良い曲。

Forbidden」。タイトル・チューン。多少「Headless Cross」に似ていない事もない。


このアルバムのジャケットを手掛けたのは、ポール・サンプルなる人物であり、英国では非常に有名なアーティストなのだそうだ。

ジャケット・デザインは以下のようなもの。夜の墓場に、大鎌を抱えた死神が腰を掛けて嘲笑している。その視線の先には、アイオミを初め、メンバー以下一同が、化け物達と共に棺おけから飛び出てくる様が描かれている。百鬼夜行の始まりであろう。

漫画チックで、不気味ながらもコミカルな描写は、人情味がある。ブラック・サバスらしからぬアート・ワークとも言えるかも知れない(笑)。

                              20055月 akira

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