| アーティスト特集 第1弾ブラック・サバス 第二回 ブラックサバスは1970年 2月13日に自らの名を冠したアルバム『黒い安息日(Black Sabbath)』でメジャーデヴューを果たした。 このアルバムは、タイトルチューン「黒い安息日(Black Sabbath)」で幕をあける。雨降りの薄暗い雰囲気の漂う中、突如として雷鳴が響き、不気味な教会の鐘が鳴り渡る。ヴィンセント・プライスのホラー映画に欠かせないものである。奇妙な符号に英国チャート13位をマークし、最高位 8 位、5ヶ月以上にも渡り 75 位以内をキープした。 英国版のレコードのジャケットの内側には、逆さ十字がプリントされていた事と、そのバンド名、発売日、デヴィリッシュで嘗てない重厚な音により、社会的な面においても物議を醸して行く事となる。 このバンドを黒魔術や悪魔と結びつけ恐れ、遠ざける人々がいる一方、魅了されてやまない人々も生み出していった。彼等が最も初期のヘヴィ・メタルの重要な流祖の一つである事は間違いない。本人達はメタルという響きはそれほどしっくりは来ないと言うが。音楽的影響としては、グランジなどにも強く影響を与えた。オジー曰く、「グランジという言葉は朝食のシリアルみたいだ」。 だが単純に悪魔礼賛のバンドかというと全くそんな事はない。人間の苦しみや業、狂気の歌詞が多いのは事実だが、悪魔を賛美した曲はない。 このデヴューアルバムの特に注目に値する曲を挙げれば、「魔法使い(The Wizard)」という曲の歌詞は、魔術師を謳ったもので、沈黙を保ち自分の魔法を信じている彼が通り過ぎれば邪悪な力は退けられ、人々に幸福なため息をもたらす…というものだ。 ブラックサバスのストーリー性のある歌詞はオカルト好きで知られるギーザー・バトラーが中心になり書かれたものが多い。 レコーディングでは当時知識のなかったアイオミ達はこのアルバムを 8トラックマシンを用いて約 8時間にて完成させた。スタジオでできるオーバーダブなどを思いつかなかったため、単に演奏して終えるというものであった。 アイオミのトレードマークとも言えるギブソンのSGであるが、当初はストラトキャスターを使っていた。予備のギターとして転がしてあったサックスと交換して手に入れたSGであったが、ストラトのピックアップが壊れてしまったのを機にSGを使うようになった。その当時は今と違いピックアップのパーツ交換などできなかったためだ。 アイオミ曰く、“この当時はギターを二本も持っているヤツは珍しかった”、と。その辺の事情はアイオミの友人でもあるクイーンのブライアン・メイの自作ギター・レッドスペシャルの逸話を考え合わせればよく理解できるだろう。 音造りの秘話として、チューンダウンをあげてみよう。アイオミはある時働いていた工場で指先を 2本切り落としてしまう。その握力減退をカバーしようとチューンダウンを試みたのである。すると凄く太い音が出せたので恒常化していった。オジーの声に合わせて最高で半音を 3つまで下げた事もあるという。当時はそうしたやり方に対して間違っている!という批難を随分受けたものだとアイオミは語っている。ローEを鳴らすためにキーをEに据えた曲を多く書いた。 他にアンプ事情を語れば、このころはディストーションを備えたアンプなど気軽に買える時代ではなく、歪むアンプは欠陥品として返却されたものであった。だが、アイオミは逆の事をやりたくて、自分用に作ってもらったレンジマスターという小さなトレブル・ブースターを使っていた。 アイオミはエフェクターは今でもコーラス、ディレイ、ワウワウくらいしか使わないそうだが、ジミ・ヘンドリックスも使っていたワウワウを未だに使っているという。世界に 8台しかない珍品で、ジミ・ヘンドリックスが 1台、アイオミが 2台所有という御大層なシロモノである。 そして同年 9月にセカンドアルバム『パラノイド(Paranoid)』が発売された。このアルバムは 5日かけて作られたが、タイトル曲「パラノイド(Paranoid)」の大ヒットが彼等を一大スターダムへと押し上げた。アメリカのチャートインを果たし、71年には来日公演実現までこぎつけたが、アイオミの急病のためにキャンセルされた。 だがここに一つの逸話がある。後年アイオミにこの話を尋ねたところ、そんな話は知らないという。あるプロモーターの金絡みの?思惑があったという話だが、それによりその後のサバス来日はなくなった。これがなければブラックサバスは日本での評価はレッドツェッペリンやディープパープルと同等の評価を受けていただろうと伊藤政則氏は語っている。前者はこの年に初来日、後者が翌72年に初来日を果たした。 因みに「パラノイド(Paranoid)」は、つい最近までX−TRAILなる車のCMソングとなっていたので記憶に新しいだろう。カバーしているのはメガデスである。 また同アルバムに収録されている「アイアン・マン(Iron Man)」は近年相方が亡くなった人気プロレスラー、ロードウォリアーズがテーマ曲としていた事で知られる。 個人的には、3曲目の「プラネット・キャラバン(Planet Caravan)」をお薦めしたい。ジャズのスケールを用いたプログレ的な実に不思議な響きのするナンバーだ。後半のアイオミのソロに注目して聴いてみて欲しい。 2004年12月 akira
|
著者へのご意見・ご感想・質問等はまで
過去の特集記事一覧ページへ戻る
HOME