| アーティスト特集 第1弾 ブラック・サバス 第三回 1971年7月、ブラックサバスは 3rdアルバム『マスター・オブ・リアリティ(Master Of Reality)』を上梓する。この作品で初めて、ダウンチューニングの手法が用いてレコーディングが行われた。 このアルバムの特徴としては、チューニングダウンによる分厚くヘヴィなサウンドがまず挙げられる。そして、アコースティックナンバーが追加された事が当時、前二作を聞いていた人間にとっては新鮮な響きだったようだ。サバスが一つのスタイルに拘泥するバンドではないという主張でもあった。 具体的な楽曲に関する解説をさせていただけば、まず一曲目「スウィート・リーフ(Sweet Leaf)」。麻薬に関する歌であることはあまりにも有名な楽曲である。麻薬によって素晴らしい世界が開示されたというオジー(達)の思いが歌詞に込められている。オジーの声が切れている。 ニ曲目「アフター・フォーエヴァー(After Forever)」。当時のアンプ事情は致し方ないが、アイオミのギターワークによく耳を傾けてみると実に狂気を感じる。狂気的なうねりのギターとベースのリフに軽快なドラムのアンサンブル。アンプ事情はともかくも、メタルの氣が実に感じられるナンバーである。歌詞も実に面白く神に対する強い信念を謳ったものである。自分は神に対する信念を強く持っており、人々が嘲笑しようがその信念が揺らぐ事はない。時の終わりに人々が恐れおののいても俺は準備ができている、という内容の歌詞だ。 60,70年代という時代は、欧米の社会においてキリスト教の墜落や社会的な堕落(性の解放など)が盛んになった時代であり、それはヒッピームーブメントなどからも分かる。そういう時代にアンチヒッピーを掲げた彼等、一見反キリストと思われがちな彼等が、こうした歌を歌っているのは興味深い。 余談的な話をすれば、ヒッピー達の旗手はビートルズが重要な役割を果たしていたが、彼等がヨーガや禅などに興味を抱いたのも、ヒッピー達に東洋的な神秘主義に対する憧憬を抱かせた。インスタント禅と呼ばれるが、麻薬で悟れるという噂を嗅ぎつけて多くのヒッピー達が麻薬に走った。(ヒッピーとは尻(ヒップ)に麻薬を打つ人の意味) アメリカの社会的背景を述べておくと、アメリカという国は現在でもキリスト教原理主義者と呼ばれる人々が数千万人を占める国家なのである。この人々は昔ほどではないが、未だにキリスト教的な道徳などにはうるさく、例えば民主党であれ、共和党であれ、堕胎などに厳しい条件を課した方が選挙でも当選する。また同性愛の結婚は認めないなどと盛んに主張されている。イラク問題などにも一役買っているのがこの人々である。ハリー・ポッターを本気で焚書にする人も実在している。 悪魔などはしばしばメタルのテーマになったりするので、こうした現実の社会的な背景を知っておくと参考になるだろう。 ここで、キリスト教的な影響を感じさせる微笑ましい?逸話を挿入しておこう。 アンスラックスのチャーリ・ベナンテは、5th アルバム『血まみれの安息日(Sabbath Bloody Sabbath)』が出た頃、このアルバムのジャケットにあるような666と記された上にドクロが刻まれた銀色のバッジを持っており、いつも身に付けていたが、母親がそれを嫌いだったらしく、洗濯中にわざとなくされてしまったという。 リッチー・コッツェンは、サバスのコンサートのTシャツで666と前にプリントされたものを持っていた。いつも学校に着て行ってたのだが、教師が気がついて母親に注意した。もっともリッチー・コッツェンの母親は「fuck off(余計なお世話だ)」と教師に言ってやったというが。 前70年の『パラノイド(Paranoid)』で初のアメリカツアーで成功を収めた彼等だったが、このアルバム『マスター・オブ・リアリティ(Master Of Reality)』では、アメリカチャートのトップ10入りを果たし、ロングセラーをマークした。 そして4thアルバム『ブラックサバスvol.4(Black Sabbath Vol.4)』(72年9月発表)である。このアルバムでも麻薬についての歌が歌われている。6曲目の「スノウブラインド(Snowblind)」である。この頃は完全に麻薬にのめり込んでおり、仕事も苦しく、麻薬に頼らざるを得ない状況だった。 3曲目の「チェンジズ(Changes)」はつい最近、オジーと娘のケリー・オズボーンがデュエットをして英国チャート一位を記録したところである。原曲は、失恋の歌で昨今の日本ではついぞお見かけしない痛切な思いが伝わってくる。だが、ケリーとのデュエットでは原曲の歌詞を少し変えて、父と娘(オジーとケリーか?)の別れを歌っている。その癖に二人でデュエットをしているのは変だ!などとは言わないでおきたい。 ブラックサバスの失恋の歌は、『マスター・オブ・リアリティ(Master Of Reality)』における「ソリチュード(Solitude)」にも言えるが、非常に真面目といおうか、シリアスで、ニヤニヤ笑った感じのしない悲しみが伝わってくる。筆者は遺憾ながら視聴した事は全くないが、2004年におけるブームたるペ・ヨンジュン的な恋愛世界よりずっと上質の気分にさせてくれるだろうと推知している。悲しい気分になりたい人には上記2作品をお薦めしたい。「ソリチュード(Solitude)」に関して言えば、相当重たく暗く悲しい気分になれる。切実な体験をしてみて欲しい。 2004年12月 akira 追悼 先日、凶弾に倒れたexパンテラ、ダメージプランのダイムバグ・ダレルに追悼を捧げる。筆者はこの事件で不愉快でザラザラするような戦慄的な気分がしたが読者の方々はどうだったであろうか?パンテラの『悩殺(far beyond driven)』にはブラックサバスの「プラネットキャラバン(Planet Caravan)」が収められている。氏もギター事始(ことはじめ)はサバスであった。ある誕生日に父親がBMX bike でもギターでも買ってやると言った。氏は初め自転車を選んだが、すぐにブラックサバスに出会い、自転車とギターを交換していいか?と尋ねた。惜しい人物を失った。冥福を祈る。 → Next 「第四回 ブラックサバス 5th、6thアルバム期」 |
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