アーティスト特集 第1弾 ブラック・サバス

第七回

ブラックサバス

ロニー・ジェイムズ・ディオ〜イアン・ギラン期



1981年『悪魔の掟(mob rules)』がリリースされる。この作品のタイトル・チューン 「mob rules」は映画『ヘヴィ・メタル』のサウンドトラックの中にも収録されている。ここには他に、ブルー・オイスター・カルトやナザレス、トゥラスト、グランド・ファンク・レイルロードなどが新作を捧げている。

オジー在籍末期はバンドのセールスも虫の息状態であったが、ロニーをVo.に据えた『heaven and hell』により再びミリオンをマークする。当然次回作も、レインボー的様式美も感じさせる前作の流れを汲むものと思われた。ところが、この『悪魔の掟(mob rules)』はドゥーム的で重たく、テンポを殺した楽曲が散見するのである。前作はサバスの代名詞とも言われるリフを感じさせなかった。だが、この作品においてはサバティカルなリフを存分に堪能できる。

Drumsは、ビル・ウォードに代わり、ヴィニー・アピス加入。「ヘヴン・アンド・ヘル・ツアー」を途中脱退したビルの代わりであったヴィニーを、そのまま起用している。ビルの脱退理由は、薬物、アルコール、そして怒りであった。彼は盟友であったオジーをバンドから脱退させた事に苛立ちを覚えていたのである。

では楽曲の紹介に移ろう。

アルバムの一曲目、「turn up the night」。ノリの良いビートに重たいギター、ベースの刻み。ロニーの熱唱。サバスの皆さんが全員ノリに乗りまくっている。グルーヴィ。それはギター・フィルでのトリルや泣きのフレーズ、ドラム・フィルのそれなどにもよく表れている。最後のサビの連呼とギター・フィルとの絡みには泣きの戦慄を覚えざるを得ない。NWOBHM的なノリをも感じさせる。

voodoo」。ある時期、日本においてもヴードゥー教が流行った。丁度この時期であろうか。重いリフ。ギターのおかずが美味しい。

(注1)ヴードゥー。下記参照

1983年『ボーン・アゲイン(born again)』を発表。ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo.)に代わり、イアン・ギラン(ex-DEEP PURPLE)加入。ヴィニー・アピス(dr.)に代わり、ビル・ウォード復帰。ロニーの脱退理由は、アイオミとギーザーがサバスを自分達のものにしすぎるのが嫌だったためだ。

イアン・ギランは、言わずと知れたDEEP PURPLEのフロントマンである。ロニーに劣らぬ実力を備えた実力派シンガーである事は誰も疑うまい。(これまでのサバスのヴォーカリストはいずれもHR/HM界の最高峰のそれだ!)だが、ギランのVo.起用には物議を醸した。

ギランはサバス加入の目的は金であったとも言われ、黒いレザーの着用を拒否した。DEEP PURPLE70年代においてサバスのライバルである。サバスの演奏に「smoke on the water」を熱唱するギランは、当時のファンの目には相当異様に映ったようで、DEEP SABBATHと揶揄された。

ギランの述懐によると、楽曲は良かったという。だが、造った歌詞が話の筋がないものだったので覚えられず、足元にカンペを置いていた。悲しい事にスモークをたいていたため、「歌詞がよく見えず激しい焦燥を覚えた(笑)」と当時を回想する。アイオミ達は友人であり、プレイヤーとして尊敬しているが、自分には合わなかったとも告白している。その意見はアイオミ達も同様だった。

このアルバムのジャケットは、ブルーの背景に真っ赤な悪魔の赤子が描かれ、禍禍しく実に不気味な姿を映し出す。スティーブ・クラッシャー・ジョールの手によるものだ。彼は、Kerrang!誌のデザイナーであり、オジー・オズボーンのためにも絵を描いていた。『BORN AGAIN』のための絵は、アイオミ達に嫌われるように描いた。だがアイオミはそれをとても気に入ってしまう。もっともイアン・ギランはそれを反吐が出ると嫌ったが。

楽曲解説に入る。このアルバムは政治的には困難な面を持ち合わせていたが、楽曲自体はブリリアントだ。アルバム全体の密度は濃い。またサバス史上で考えても重い音を出している。

一曲目「trashed」。出だしからノリに乗っている。筆者はイントロ部分のベースライン(単純だが)が非常に好きである。そこにイアン・ギランのシャウトが入る。小気味良いアップテンポなリズム。アイオミのソロも走っているが、ギーザーの重厚なベースが全てのノリを支えている。メロディもいい。

「ストーンヘンジ(STONEHENGE)」。ブラック・サバスはこれまでも美しいインストゥルメンタルの楽曲の数々を提供してきた。この曲には、神秘的で神々しさ、かつ畏怖を覚える。エンヤやエニグマなど癒し系などとも一脈相通じるものがある。短い楽曲だが。

(注2)ストーンヘンジ。下記参照。

そしてこの曲の次に、「disturbing the priest」が入る。イアン・ギランの狂気の高笑いで始まり、それで終わる。重くてかつ、畏怖を感じさせるギター・リフ。

zero the hero」。この作品でもっともヘヴィな楽曲だ。重厚で戦慄のリフ、間奏。GUNS N' ROSESがリフを「paradise city」のために拝借している。

born again」アルバム・タイトル・チューン。重く暗い曲である。ギター・リフのエフェクターの音が不気味であり、哀しげである。ブルース的な歌のメロディ。熱くて悲しみを誘う。物憂げな響きもあろう。エンディングのギター・ソロが、暗く、重く、悲しい。メロディは実に美しい。遠い過去に思いを馳せる。いつか見た夕日。深い悲しみとも懐古とも知れない不思議な感情。ここに想起される夢は、前世の記憶なのか。そうした深みを持つ曲だ。

オジーが抜けた事に罪悪感を感じて抜けたビルだがこのアルバムの後、健康問題を理由にまた離脱した。ギランは1984年にDEEP PURPLE再結成し、「Perfect strangers」のレコーディングのために去る。人間関係の問題は大きかったが、彼等は未だに意欲が尽きていないという事実の証左となるアルバムであった。

(注1)ヴードゥー

カリブ海に浮かぶハイチ島で発達した。植民地時代、白人が黒人を奴隷としてアフリカより連れてきたことは周知である。その白人の虐げへの対抗策としてヴードゥーは発達した。

ヴードゥーとは元来アフリカの一部族の言葉で「精霊」を意味し、土着のアニミズム(精霊信仰)である。このあり方は、同じく白人への抵抗手段として発達したと言われる武術「カポエイラ」と共通している。(カポエイラは現在舞踏と化している。)

オカルト的な特徴としては、呪い、ゾンビなどである。キリスト教のミサを取り入れたり、イスラムまでも接収したりと元来のそれとは姿を変えている。白人への対抗手段として発達したため、黒い部分がクローズ・アップされた。だが、フランスの植民地となっていたハイチが、一致団結させる装置としてヴードゥー教が重要な役割を果たした。独立を果たしたのはナポレオンの時代である。

蛇足ながら、黒人奴隷は1000万人もアフリカから“輸入”された。そうして人員が裂かれた事が、現在のアフリカの貧困の原因の一つとする論もある。その人身売買の背景には黒人の仲介問屋があったという。同じ黒人が黒人を売る為に捕まえ、それを白人に売ったという。それにより巨利を得た黒人の王国が存在した。

(注2)ストーンヘンジ

一般的にはドルイド教団の最大の祭祀場であったとされる。だが、ギリシャ人によるとストーンヘンジはドルイド以前に存在していたとされ、伝説的な民「ハイパーボリア人」の造った聖所とされている。また別の伝説によると太古の巨人族がエジプトから運び込み、後にアーサー王の魔術師マーリンが現在の位置に移したとも伝えられている。

ミステリーサークルというものを皆さんは御存知だろう。英国の広大な麦畑に、多様で巨大な美しい紋様が描かれるという現象である。諸説紛々であるが、未だ原因は分かっていない。相当古い現象のようで中世の文献にも、サークルについての記述が挿絵と共に記録されている。もしかするとドルイドの末裔の手によるものなのかも知れない。

ブラック・サバスはステージ用にストーン・ヘンジのオブジェを造らせたが、巨大過ぎてステージに収まらない事もしばしばであり、難儀したという話だ。

                              20052月 akira

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