アーティスト特集 第1弾 ブラック・サバス

第九回

ブラックサバス『HEADLESS CROSS』期



前作『エターナルアイドル(THE ETERNAL IDOL)』のツアーは芳しくなかった。だが、今作『ヘッドレスクロス(headless cross)』は十分な好成績を収めるものとなった。(19894月発表UKランク10位。)

ケルト十字をその名に冠したこのアルバムは、ロニー時代に培った様式美をより一層進化させた出来映えとなっている。前作よりヴォーカルの座を勤める事となったトニー・マーティンの声質が、ロニーのそれと似ているところも様式美のスタイルに適しているのかも知れない。ロニーのヴォーカル・スタイルは、熱く、太く、高音域をカヴァーし、またクラシカルな洗練された声も出せる。トニー・マーティンのそれはそれに似通っているのである。

ロニー自身は、このブラック・サバスが様式美を打ち出したスタイルに批判的な指摘をしている。曰く、様式美は自分が持ち込んだものであり、ブラック・サバス本来の姿とは異なる…と。サバスは元来、典型的なヘヴィメタルバンドだったと氏は語る。

この作品は、トニーによると、新しいマネージメントのおかげで政治的な面でのトラブルはなく、スムースであったそうだ。また大物ドラマー、コージー・パウエルが参加している。これはハクを付けるためにアイオミが強力なメンバーを求めた事に起因する。前2作の反省した側面もあるのかも知れない。では、メンバー紹介に移ろう。

Ds.にコージー・パウエル。渡り鳥として知られた彼であったが、ブラック・サバスへは総計3枚のアルバムに参加している。アイオミとコージーは元々友人であり、アイオミからのオファーは今回で3度目であり、初めて参加した。

1回目は、『ヘヴン・アンド・ヘル』の後にビル・ウォードが脱退した時の事である。この時は、彼はレインボーに参加していたため断った。その1年後には、彼は失業してしまい、断ったことを悔やんだ。2回目は、8283年頃のロニーが抜けた後の事である。そして3度目は、8586年頃のEL&P2年ほど演ったあとの事である。(EL&Pを最後は酷い状態だったようだ)ここで初めて参加する運びとなる。

アイオミが直接電話をかけて、コージーがOKサインを出し、アイオミの自宅でひと月程泊まり込んで綿密なミーティングを練った。プロデュースはこの二人の手による。彼が語るところによれば初めはガタガタだったという。だが、key.のジェフ・ニコルズや皆が一丸となってアイデアを出し、結果的に優れた作品をつくれた。参加できて本当に良かったと言っている。

コージー・パウエルは、ヴァウ・ワウなどの参加により、日本でも非常に人気が高い。日本人アーティストによるトリビュート・アルバムが制作されているほどである。彼の名声は、レインボーやホワイトスネーク、そしてこのブラック・サバスなどの参加による部分が大きい。

彼の出自、軌跡はブラック・サバスと非常に似ている。どちらも60年代の終わりから活躍し始め、音楽的影響もブルース色が濃いもの、クリームなどの影響を受けている。またコージーがレッド・ツェペリンの大物ドラマー、ジョン・ボンナムと兄弟同然の仲であった事は有名な事実だ。奇しくもこの二大巨人ドラマーは事故死により既に故人である。非常に惜しい人物達であることは言を待たない。

Vo.にトニー・マーティン。この人物は前作からの参加である。元々ORIONその他の無名バンドに所属していた。ほとんど新人と言っていい彼の『THE ETERNAL IDOL』への起用は大抜擢だった。だが、彼はブラックサバスの歴史において、オジーの次に参加したアルバムの枚数が多い。これは特筆すべき事だろう。またその歌唱法がロニーに酷似した部分がある事は上述した。オリジナル・ブラックサバスのメンバー達と同じくバーミンガム出身であり、初起用の時点で28歳であった。

B.にローレンス・コットル。レコーディングのためのセッション参加である。ジャズ系の人である。ツアーには、ニール・マーレイが起用された。この人物はコージーと同様に渡り鳥だ。ホワイトスネークではコージーとニール・マーレイは共演している。ここでの再開はファンに取っては豪華と形容されるに相応しく、アイオミがハクをつけたいとの発言の面目躍如と言えるだろう。

その他、key.にはジェフ・ニコルズが変わらずに名を連ねているし、ゲストプレイヤーには何とクイーンのブライアン・メイが数曲でギターを弾いている。彼がアイオミの古くからの友人である事は以前にも述べた。

この作品は、英国ランキング10位に入った事からも分かるようにヒットを飛ばした。そして次のアルバムもこの強力なメンバーにより制作され、覇者(帝王??)サバスの底力を見せつける事になる…。

                              20053月   akira   


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